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Q10. 卵子の質、胚の質とはどういう意味ですか?

 採卵後、卵子を顕微鏡で観察し卵子の質を確認します。体外受精では受精の確認まで卵子の質は確認できませんが、顕微授精法では顆粒膜細胞を取り除く操作を行なうので受精前に卵子の状態が確認できます。受精できるのは成熟卵子であるMⅡ期卵子です。採卵してもGV期卵子やMⅠ期卵子(減数分裂の途中の卵子)あるいは変性卵子は顕微授精の対象外です。GV期卵子やMⅠ期卵子は未熟卵子と呼び、採卵した卵子の5~15%程度に未熟卵子が含まれます。加齢はその要因の一つです。GⅤ期卵子・MⅠ期卵子・変性卵子に受精は起こりませんので、体外受精でこれらの卵子が多い場合には受精率は低下します。(図5参照)
 受精の確認は、媒精あるいは顕微授精後13~18時間の間に顕微鏡で観察して行ないます。卵子の核(染色体)と精子の核が2個並んだ胚(2前核胚)が正常受精です。胚を観察した時に多核胚(核が3個以上認める胚)も見られることもあり、これらは異常受精と判断し、胚移植の対象外になります。体外培養した胚は分割し、図10のように発育していきます。
 胚の評価法に関しては、まだ十分に確立された方法はありません。胚の分割の研究がまだ十分に解明されていないためです。通常、胚の観察は培養器から胚を取り出し一定の時間に顕微鏡で発育を観察します。近年、連続的に培養器の中で胚を観察するタイムラプス検鏡が普及してきました。培養環境を変えることなく、連続して数日間、胚の発育を観察することができるようになり、多くの新たな研究成果が報告されています。
 現在広く行なわれている胚盤胞評価は胚の評価法の一つです。質の低下した胚は、細胞分裂が停止し胚盤胞まで到達しません。受精後5日から7日で胚盤胞まで到達した胚は、一般的に良好胚と判定されますが、100%の妊娠率が得られるわけではありません。
 良好胚盤胞移植で妊娠しない理由として、胚の染色体異常が考えられます。胚の染色体数や構造を調べる検査が着床前診断(PGT;pre-implantation genetic test)です。
 PGTには重篤な遺伝性疾患で着床前に単一遺伝子欠損を検査するPGT-M:(PGT for monogenetic/ single gene defects)、染色体転座が原因の習慣流産に対する着床前染色体構造異常検査PGT-SR: (PGT for structural rearrangements)、染色体で数的異常を検出する染色体異数性検査PGT-A(PGT for anneuploidy)が含まれます。
 PGT-Aに関しては世界中から多くの検査結果が報告され、年齢とともに胚の染色体異常率は上昇します。受精後5日間培養した胚盤胞(着床直前の胚)の年齢別の染色体異常率は、20歳代で約25%、30代全般で35%、37歳から上昇し1歳毎に10%上昇、44歳では胚盤胞の90%が染色体異常胚となると報告されています。

図10
図10

(2017年7月7日 公開)

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