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生殖補助医療技術 ARTって何?

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Q14. ARTの副作用を教えてください。(米国生殖医学会説明記事より改変)

 ARTを行うために必要な排卵誘発剤や処置で極めてまれに合併症を起こすことがあります。

①薬物治療(排卵誘発剤)のリスク

  1. ARTに使用される注射薬剤は、注射部位に軽い打ち身のような痛みや発赤を伴うことがありますが、アレルギー反応を起こすことはほとんどありません。
  2. 卵巣過剰刺激症候群(OHSS)は、卵巣を刺激する薬(排卵誘発剤)、特にゴナドトピン注射薬剤を使用した時に起こります。OHSSは、ARTを受けた女性の1%未満に起こることがあります。症状が悪化してくると、脱水症状(喉の渇きなど)、腹部や胸部の水の貯留(腹水・胸水)、血液凝固系の異常による血栓塞栓症、腎機能障害など重篤な症状をもたらすことがあります。

②採卵のリスク

 一般的に採卵は腟から超音波を挿入し、長く細い針で卵巣を穿刺して行いますが、鎮静薬や局所麻酔剤を使用しても若干の不快感・疼痛を伴うことがあります。卵巣からの出血はわずかですが、ごくまれに輸血を必要とすること、また卵巣に近い膀胱や腸、血管が傷ついた場合には外科的処置が必要なことがあります。経腟超音波下での採卵により感染を起こす可能性はありますがまれです。ただし、感染した場合には重症化する場合もありますので、早期に対応するなどの注意が必要です。

③胚移植のリスク

 胚移植は、卵管、子宮や子宮頸管に軽い炎症を起こす事があります。

④妊娠でのリスク

  1. ARTによって妊娠したことで、出産に関する障害の増加はありません。流産率は約20%と自然妊娠の方と変わらず、女性の加齢とともに流産率は上昇します。子宮外(卵管)妊娠の危険性は約5%に増加します(自然妊娠では80人に1人に対して、20人に1人の割合)。2個以上の胚を移植した場合子宮内外同時妊娠が起こり得る可能性はありますが、非常にまれです。
  2. ARTを受けた女性に共通のリスクとして、多胎妊娠があげられます。複数胚の移植では二卵性双胎のリスクが、また胚盤胞移植では一卵性双胎のリスクが上昇します。多胎妊娠は、早産、母体出血、妊娠高血圧症候群、帝王切開、妊娠糖尿病の危険性を増加することになります。

⑤ストレス

 ARTでは過度の心理的ストレスを受けるリスクがあります。ストレスを和らげるためには、患者さん自身がARTに関する知識を深め、十分な休息や適度な運動、ストレスの発散、バランスのよい食べ物を摂取して体調を整えることが望まれます。また家族の協力を得ることも有効ですが、場合によっては心理の専門家によるコンサルトが必要なこともあります。

(2017年7月7日 公開)

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