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生殖補助医療技術 ARTって何?

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Q13. 妊娠率について教えてください。

 まず妊娠の定義が必要になります。一般でも検査のできる尿妊娠反応検査は、尿中に排出されたhCG(胚の絨毛から出てくる妊娠特有のホルモン)をチェックする検査です。hCGの値が25~50mIU/mLを超えると尿妊娠反応陽性になります。そして現在、血液のhCGの測定が可能となったため、非常に初期の妊娠判定が可能になりました。血中hCG値が5mIU/mL以上で着床があったと判断しますが、ARTの妊娠報告(日本産科婦人科学会生殖医療実施登録施設での個別調査)では、子宮内に胎嚢を確認できた場合を妊娠と定義しています。胎嚢が見える前に血中hCG値の上昇が見られただけの妊娠(生化学的流産)に関しては妊娠統計から除外されています。妊娠の判定をどこに設定するかで妊娠率は変わってきます。
 また、ARTの妊娠率には様々な表現方法があり、妊娠率を計算する場合、その母数を何にしたかで表現が変わります。よく使用される妊娠率の表現を示します。
 たとえば5人の患者さんが12回の卵胞刺激(治療周期)を受け、2回は採卵がキャンセルとなり、10回の採卵(採卵周期)、新鮮胚と凍結胚を合わせて9回の胚移植受け(胚移植周期)、3人の方が妊娠した場合を例に挙げて解説します。

①対患者妊娠率

文字通り患者さんあたりの妊娠率です。上記の例では、対患者妊娠率60%(3妊娠/5患者)と表現します。年齢による妊娠率変化を見る場合には有用です。

②対治療周期妊娠率

ARTの計画をたて卵胞刺激まで行った周期を母数にしています。上記の例では、対治療周期妊娠率25%(3妊娠/12治療周期)と表現します。年齢が高くなると排卵誘発剤に対する卵巣の反応性が低下します。採卵まで行き着かない患者さんも見られます。このような方々も含めた妊娠率ですので、妊娠率の表現の中では最も低い結果となります。

③対採卵周期妊娠率

採卵を受けた周期が母数です。上記の例では、対採卵周期妊娠率30%(3妊娠/10採卵周期)となります。卵巣の反応不良で採卵を中止したケースは除外されています。採卵を受けた方がすぐにそのまま胚移植を行なうわけではありません。副作用回避などで、すべての胚を凍結保存する場合もあります。その後凍結保存した胚を移植します。1回の採卵で複数回の凍結胚移植受けられる方もおられ、その中のどれか1回でも妊娠成立すれば、1回の採卵で妊娠したと表現されます。一方、採卵しても胚移植できる卵子や胚を回収できず、胚移植が中止となった方も含まれます。患者さんにとって採卵が最も負担になる処置です。対採卵周期妊娠率が低い場合患者さんの負担が大きく、対採卵周期妊娠率が高い場合患者さんの負担が少なかったことになります。

④対胚移植周期妊娠率

胚移植を受けた周期が母数です。上記の例では、対胚移植周期妊娠率33%(3妊娠/9胚移植周期)となります。採卵や胚移植中止例は含まれないので、妊娠率の表現の中では対治療周期や対採卵周期に比較し高い値になります。新鮮胚移植周期や凍結胚移植周期妊娠率といった表現をされることがあります。

(2017年7月7日 公開)

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